・マンションの管理組合は、法人格を取得していない管理組合(人格なき社団)と管理組合法人とが存在します。
・どちらも営利を目的としない非営利団体です。したがって、非営利団体としての会計基準が要請されます。
・さらに管理組合法人については、法人税法2条において公益法人等とみなされており、非営利法人のなかでの公益法人の会計に準拠した会計基準が要請されることになります。
そして法人格を取得していない管理組合についても同様と判断されます。
・しかしながら、公益法人会計は一般にはなじみが薄く、営利会計の企業会計に基づく会計処理が広く行われており、企業会計における一般会計原則は、会計の憲法のような存在であり、企業会計に限らずすべての会計処理のベースとなる原理・原則を示すものであります。
・以上から、管理組合会計の会計原則は、企業会計の一般会計原則をベースとした上で、公益法人会計の原則を取り入れたものとなります。
①真実性の原則(公益法人会計と重複)
②正規の簿記の原則(複式簿記の原則)(同重複)
③明瞭性の原則(同重複)
④継続性の原則(同重複)
⑤保守主義の原則
⑥単一性の原則
・予算準拠主義の原則
・複式簿記の原則
・真実性.明瞭性の原則
・継続性の原則
・目的別会計
☆管理組合会計の会計原則は特別のものはありませんが、企業会計の一般原則をベースに公益法人会計の原則を取り入れたものになります。公益法人会計の一般原則のうち3原則は企業原則と重複します。
公益法人会計から取り入れるべき原則は、予算準拠主義の原則です。
又、予算準拠主義とならび公益法人会計から取り入れるべき会計手法は、目的別会計です。
・管理組合会計の目的は、マンションの管理・保全を最小限の費用で、最大限の効果を得るための会計指標を明瞭に表示することにあります。
・事業計画に基づき予算を作成し、その予算と決算との差異を分析することにより、予算の執行の適否やその責任、事業計画の適合性等を判断することができるのです。
・管理組合会計では予算準拠主義により、予算と実績を比較検討することで、効率的な管理を実現することができるのです。
・予算準拠主義と並び公益法人会計から取り入れるべき会計手法は、目的別会計です。
・特定の目的の一つとして、「資金留保目的」があります。マンションの大規模修繕に対する積立金がまさに資金留保目的に該当し、管理組合会計では一般会計のほかに特別会計として、修繕積立金会計を区分経理することになります。
・管理費等については日々の管理業務に充当し、修繕については修繕積立金として区分して管理し、目的の異なる勘定は相互振り替えをしないのが原則です。
・管理組合が収益事業を行う場合は、さらにもう一つの特別会計として区分経理しなければなりません。
・企業会計原則は、一般原則の他に、損益計算書原則、貸借対照表原則がある。
・損益計算書原則に発生主義の原則がある。
・「発生主義の原則」とは~「すべての費用および収益はその支出および収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割り当てられるように処理しなければならない」という原則
・具体的には、入金・出金のみで処理するのではなく、管理費等の未収入金、経費の未払い金等を把握し計上します。
簿記とは、日々のマンション管理・運営を一定のルールに従って会計帳簿に記録・集計していく事をいいます。そして単式簿記と複式簿記があります。
複式簿記とは
取引には原因(財産の増減原因)とそれによりもたらされた結果(財産の増減結果)が必ず存在します。これを「取引の法則性」といいます。
複式簿記は、この取引の法則性に着目し、取引の原因と結果とを同時に会計帳簿に記録・集計していく帳簿記帳の技術です。
単式簿記とは、いわゆる家計簿のようなものがそれに該当します。
単式簿記は現金の入出金を基準にして経営活動の結果を把握して行こうとするもので、現金の入出金という事実だけをシンプルに会計帳簿に記録していく記帳方法であり原始的な記帳方式といえます。
従って「網羅性」「立証性」「秩序性」を備えておらず、正規の簿記に該当しないため、単式簿記により作成された会計帳簿では税務上の青色申告という優遇を受けることが出来ません。
複式簿記の技術は人類が大昔に発明したものですが、文豪のヨハン・ゲーテはその著書「ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代」において、複式簿記を人類の最も偉大な発明のひとつであると賞賛しています。